サスペンスの到来「知りすぎていた男」暗殺場面のオーケストラ「ストームクラウド」

Pocket

ようこそ、ようこそ、ようこそ!クラシック&ゲーム音楽好きの中村卓矢です。

カルミナ・ブラーナみたいな曲はお好きですか?
大合唱付きのオーケストラで、力強いリズムとドラマチックな迫力で押していくあの曲です。ゲームに例えるならば、ファイナルファンタジー7のラスボス「片翼の天使」の様な・・・。
圧倒的で壮大な力を持つラスボスとの決戦するかの様な曲のことです。

今回はそんなカルミナ・ブラーナみたく嵐や動乱を予感させるような荘厳な曲、
アーサー・ベンジャミンのオーケストラ曲「カンタータ、ストーム・クラウド(嵐の雲)(時化)」の話を分かち合いたいと思います。

※以降の文には、ヒッチコック監督の映画「知りすぎた男」のネタバレを含みます。ご注意を
※「知りすぎた男」は映画好きがお奨めする面白い娯楽サスペンス映画なので、もしサスペンスが好きならば是非是非、以下を読む前にみてください。

作曲者はアーサー・ベンジャミン

つくった人はどんな人?
アーサー・ベンジャミンはオーストラリア出身でイギリスのクラシック作曲家
だ。ブラームスを崇拝し、スタンフォードという作曲家に弟子入りした。
交響曲や協奏曲・合唱曲なども書いているが、
一番有名な作品は以外にも息抜きにつくった小品「ジャマイカ・ルンバ」。

さて、そんな彼がつくった「cantata the storm clouds(カンタータ、ストーム・クラウド)」とは一体どんな曲なのか?

ヒッチコック監督「知りすぎた男」で使われた

この曲は、ヒッチコック監督の「暗殺者の家」、そしてそのリメイクである「知りすぎていた男」の最も重要な場面で登場した。
休暇旅行中の平凡な一家が、ひょんなことから
首相の暗殺計画の陰謀に巻き込まれてしまうサスペンス映画だ。

映画の内容を詳しく話すと、モロッコ旅行中知り合いになったフランス人男ベルナールが死ぬ間際、主人公ベンに「ロンドンで政治家が暗殺される。・・・アンブロース・チャペル・・・」という謎の言葉を残す。
その直後、主人公の息子ハンクが誘拐され「バラしたら息子殺す」と脅される。
主人公ベンとその妻ジョーは、息子を助けだす為にベルナールが残した謎の言葉を頼りにロンドンへと発つ。

紆余曲折を経て、物語は暗殺計画が実行されようとしているクライマックスへ!
この暗殺計画というのが、実に劇的で洒落ている。
アルバート・ホール(コンサート)に訪問した首相を
オーケストラ曲の演奏のラストに1回だけあるシンバルの音と紛れて狙撃し、暗殺しようというものなのだ。

そう、その劇場のコンサートの場面で演奏されていたのがこの曲「ストーム・クラウド」なのである。

リメイクの際、ヒッチコックは「クライマックスは新たに作曲してもいい」といった。
作曲家にとっては、自分の音楽が最も重要な場面で、最高の形で映画に使われるまたとないチャンスだった。
だが、音楽担当だった作曲家バーナード・ハーマン(クライマックスシーンの指揮者としてカメオ出演)は「(このクライマックスに)これ以上の曲は誰にもつくれない」といい、再び「カンタータ、ストーム・クラウド」が採用されたのだった。

それほど、このカンタータの効果はスゴかったのは想像に難くない。

まとめ_スリリングで手に汗握るドラマチックな曲

曲自体は嵐をテーマにした荘厳な曲だ。
だが、暗殺計画に関係する人々の感情と雰囲気が恐ろしい程フィット!
セリフがサイレントとなり曲の音だけが聞こえるなか
波乱の幕開け、迷い震える心、緊張と奔走する登場人物たちの心を見事に表現し、
スリリングで手に汗を握るドラマチックな曲になっている!!!

なんとかっこよく、なんと洒落ていることだろう!!!

これほど、このシーンに、絶対剥がれない接着剤でつけたかのようにフィットする
音楽があろうか?いやなかろう!
それほど、引き込まれてしまうのだ。

独断と偏見に基づく劇場型感想

※この曲が流れた「知りすぎていた男」のクライマックスのシーンに沿って書かれています。

役 者 は 揃 っ た。

広大にして権威溢れる芸術の劇場ロイヤル・アルバート・ホール。
荘厳に響き渡るカンタータ「ストーム・クラウド」のコンサートを舞台に
首相暗殺計画の幕が開かれる。
セリフはない。サイレントだ。聞こえるのは、このカンタータの音のみ。
この曲が、登場人物の心と状況を代弁するかのように鳴り響き物語は進んでいく。

嵐の幕開けを予感させるかのようなファンファーレと共に、カンタータは始まる。

何も知らずに演奏を続ける交響楽団と合唱隊、指揮者。
暗殺のタイミングを握るシンバルの奏者。そしてその暗殺の瞬間を虎視眈々と狙う暗殺者。
音楽を聴き入る客席を埋め尽くした数千もの聴衆と貴賓席に座るターゲットの首相。

コーラスが歌う。
「恐怖が忍びよる そよ風にのって
暗く深い森が体を震わせる
故ない恐れに木々がざわめく
突然おこるパニック
一斉に羽ばたく野生の鳥たち」
「鳥たちは飛び立った
鳥たちは飛び立った
だが木々は立っていた
木々は立っていた」
「枝を揺るがせ、悲鳴をあげて
野鳥までもが空に逃げる時に」

歌の内容は暗く恐ろしい嵐の様子、だがその嵐雲が持つ恐ろしくも美しい姿を表現するかのように、
荘厳に歌われ美しい旋律で奏でられる。

「ああっ神よ、どうすればいいのっ・・!」
家族の休暇を襲った突然の誘拐
今目の前で暗殺が行われようとしている、でも邪魔をすれば息子の命が危ないっ。
迷いに震え揺れる母親ジョーの心。
ジョーはどうしたらいいのかわからず、ホールの通路に立ちすくみ泣くしかなかった。
・・・歌の内容にリンクするかのように・・・。

「ドドドドドドドドド」
ティンパニーの音と共に曲が転調。
なだめるような美しい荘厳な曲調から、緊張を煽るスリリングな曲調へ。
嵐が到来したのだ。

主人公ベンがホールに到着。
ふと妻ジョーの姿を見つけ駆け寄る。

「あなたっ!」
「どうしたんだ」
「そんなことより、大変なの。一味の一人にあったわ!」
「何ィっ!?」
「あそこよ!暗殺しようとしている政治家ってもしからしたら、あの首相かもしれないわ」
「なん・・・だと・・・。君はここでまっていてくれ」
「ちょっと待ってあなた、どこいくの!?」
「止めにいかなきゃ、首相に知らせてくる。君はここにいてくれ」
「ダメよ、危険だわ」
「いくしかなんだ」
「待っ・・・」

階段を駆け上がり、首相一行の警備に伝えるが取り合ってくれない。
こうなったら暗殺者を止めるしかない。

席からたちシンバルを持つ奏者。
ボックス席のカーテンに潜み拳銃を懐から出す暗殺者。
暗殺のタイミングが、刻一刻と近づいている。

曲もテンポアップし、緊張感を高めクライマックスに差し掛かる!
「嵐の雲は崩れた」「嵐の雲は崩れた」
曲が盛り上がり、おお振りな手振りになっていく指揮者、指揮者の影映るスコアっ!
拳銃を深紅のカーテンからゆっくり突き出し狙いを定める暗殺者。
扉を開け走って探し続けるベン。
シンバルを掲げる奏者!

さぁさぁさぁ、どうなるどうなる!??
暗雲渦巻く嵐の曲調から、次第に暗雲が崩れ隙間から光芒(こうぼう)が
射しはじめていくような曲調へ、

成功か、はたまた失敗か、
のるかっ!?そるかっ!!?

シンバルを打つ前の時が止まったかの様な刹那の静寂、
スリリングな緊張がピークに達したその瞬間

「キャーッ」
「バシャァァァーーーーーン」
「バンっ」
「!?」「!?」「!?」
暗殺のタイミングであるシンバルの前のジョーの悲鳴に手元が狂い、弾を外す暗殺者。
と同時に、乱入してきたベン。
暗殺者は狼狽しその拍子にバルコニーから転落っ・・・!

嵐は去ったっ・・・。そう、去ったのだ・・・。
曲は美しい日差しを表現するかのような高らかな幕を迎える。
暗殺は阻止されのだった!

使うならば

あまりにも「暗殺決行阻止シーン」にフィットし過ぎて思いつかない。
だが、強いて言うならば、
嵐に遭遇したとき、
迷い悩み苦しんでいる時、
動乱の幕開けを予感させるときに使うといいかもしれない。

お奨め

演奏版としては、音質もクリアになったジョン・マウチェリ指揮、デンマーク国立交響楽団、2012年演奏(CDアルフレッド・ヒッチコックのための音楽)がお奨めだ。

またこの動乱を予感させるこの曲を気に入ったならば、

カール・オルフのカルミナ・ブラーナ

がお奨めです。

おまけ

音楽ではないのですが
「ホールで演奏される音楽と、それを聞く大勢の聴衆達、その裏で遂行される暗殺やテロの計画、
それを阻止する為に奮闘する主人公。
そしてひとつの楽器の音が、物語の大きなキーを握る・・・」

このシチュエーション、なかなか洒落ていてかっこよくありませんか?
私はこの「オーケストラやクラッシックな音楽が物語の重要なキーとなるサスペンス」シチュエーションが大好きです。

今回はそんなシチュエーションが入っている映画を集めてみました。

プッチーニ「トゥーランドット」をバックに、アクションに特化した「ミッションインポッシブル ローグ・ネイション」
ラヴェルの「ボレロ」をバックに、犯人との交渉・駆け引きの特化した「交渉人 真下正義」
アメリカ国歌をバックに、国家転覆レベルの計画阻止に挑む巻き込まれ型サスペンス「イーグル・アイ」
パイプオルガンをバックに、音楽ならではの大胆な方法で計画阻止を決行する「名探偵コナン戦慄のフルスコア」

どれも好きです。もしこのシチュエーションが気にっているならば、
是非見てみて欲しいです!

ではまた、お会いしましょう!

Pocket

The following two tabs change content below.
「世界を痛快一変する」こと信条に企てを実行するKAIDENDOの創始者。 強みは、人と組織の持つ世界観を芸術化できること。 その強みを活かし、人や組織の持つ理念を芸術可視化するサービス「RINE」運営。 現在は、ライフログサービスYATAABA開発中。

0 comments on “サスペンスの到来「知りすぎていた男」暗殺場面のオーケストラ「ストームクラウド」Add yours →

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です